ボートレースに必要なものとは?
ベルモントで2000メートルを走るのは問題ないが、メモリアルデイではシービスケットのスケジュールが合わないこと。
彼は9月15日から10月1日までの期間を提案した。
また2頭が同じ斤量を背負うことを希望し、517.2キロを提示したが、両方の馬が同じでありさえすれば、Lが提示するいかなる数字にも応じるつもりだった。
そして最後に、ずっとずっと高額の賞金を望んだ。
Hのあげた数字を聞いた時、Sは電話の向こうで蒼白になったに違いない。
もしSがその額を勝ち取ることができなければ、シービスケットはすでにその金額を出そうといって来ている西海岸の某競馬場に回す。
西海岸の競馬に対する東部の蔑視に長年苦しんできたHは、今回、それを逆手に取ろうとしていた。
「この国の競馬界をリードするベルモントなら、最低でもそれぐらいの数字は喜んで出すのが筋だろう」とHは告げた。
それは大胆な方策だった。
彼が求めていたのは最大級の賞金額であり、しかもそれはハッタリに近かった。
ハリウッド競馬場は確かに十万ドルという額を口にしていたが、HはS・Lが、絶対に自分の馬を西海岸で走らせないことを知っていた。
彼はSがその事実を知らないことに賭けたのだ。
Lがそのレースに強い関心を抱くような仕掛けが必要だと考えたHは、あらかじめ下調べをすませ、市場に対するのと同じ調子でLにアプローチし、どこまでも馬主の意向に沿うように提案を練り上げた。
馬にはそれぞれ好みのコースがあるが、ベルモント競馬場はウォーアドミラルのホームグラウンドで、すばらしい走りの数々を披露した場でもあった。
さらに2000メートルは、ウォーアドミラルがもっとも得意とする距離だった。
そしてHはLが彼と同様、シーズンの終わりまでにサンポーウのもっている年間賞金獲得記録を打ち破ろうとしていることを知っていた。
となれば十万ドルの賞金は、大いに魅力的に映るだろう。
彼はさらに、Lが自分の馬に割り当てられる斤量について、ひどく神経質になっていることを知った。
Wパンデ戦まで、ウォーアドミラルは一度も58.1キロを超える斤量を背負ったことがなかった。
Lは上限を59キロに設定し、馬がそのぎりぎりの数字をあてがわれたハイァリァ競馬場のレースでは、ハンデ作成委員を怒鳴りちらしていた。
また、その後のレースで59.9キロを割り当てられた際には、出走を取り消した。
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